経営強化型税務顧問 顧客事例集_全10事例

ICHIGO ACCOUNTING OFFICE

お悩み別 経営改善モデルケース

10事例を、社長が抱えていた悩みの種類ごとに4つのパートに分けて掲載しています。気になるCASEをクリックすると、詳細が開きます。

この冊子を手に取られた社長へ

「売上は過去最高なのに、通帳が増えない」「こんなに忙しいのに、なぜ儲からないのか」「値上げをしたい。でも、言い出せない」――このどれかに心当たりがあるとすれば、それは経営者としての力量の問題ではありません。会社の状態を判断するために社長が毎月見ている数字が、その会社に合っていない。ほとんどの場合、それだけのことです。

この冊子でご紹介する10社の社長は、特別な人ではありません。売上を一気に伸ばしたわけでも、大型の資金調達をしたわけでもない。ただ、見る数字を変えただけです。それだけで、会社に残るお金が変わりました。

同じ変化が、御社にも起こせます。

============================================================ いちご会計事務所様 固定ページ用パーツ 「お金が残らない会社が知っておきたいこと」事例集 - PART 1 ★ このブロックは完全に自己完結型です(style / script を内包)。 PART 2・3・4 を追加する際は、同じ構造で ・ルートのクラス名(.ichigo15tax-part1 → part2, part3...) ・各 id(ichigo15tax-part1-caseXX-... → part2-caseXX...) をそれぞれ変更したファイルを、そのままこのブロックの下に 追加していけば、既存のPARTと干渉せず動作します。 ★ id は他システムとの衝突を避けるため 「ichigo15tax-part1-」という長めの接頭辞で統一しています。 =============================================================
PART 1

お金が残らない会社

CASE 01 - 03
============ CASE 01 ============

CASE 01|建築・設備工事業 A社(従業員約20名・年商約3億円)

「売上は過去最高。なのに、なぜ通帳が増えないのか」

1

どんな会社か

福岡県内で建築・設備工事を手掛けるA社。創業以来、地元企業や工務店からの紹介を中心に、着実に受注を積み上げてきました。数年前からは大型案件も受注するようになり、売上高は2億円台から3億円台へ。誰が見ても順調な成長企業でした。

それでも、社長の頭からは、ある疑問が離れませんでした。

「売上は増えているのに、どうして会社にお金が残らないのだろう?」

決算書を見れば、利益は出ています。しかし銀行預金は思ったほど増えない。それどころか、支払日の前になると資金繰りが気になる月がある。この違和感を、社長は誰にも相談できずにいました。

2

相談前に何に困っていたか

社長が毎月確認していた数字は、実質的に2つだけでした。「今月はいくら売れたか」と「通帳にいくら残っているか」です。

売上が増えれば利益も増え、いずれ資金も増える。ごく自然な理解です。

しかし建設業では、工事の進捗と入金のタイミングは一致しません。材料費・外注費・給与を先に払い、売上代金の回収は数か月後、という案件も珍しくない。

つまりA社では、売上が増えるほど、先に立て替えなければならない運転資金も増えていたのです。売上高と預金残高だけを見ている限り、この構造は永久に見えません。

3

どんな数字に問題があったか

数字を整理すると、3つの問題が浮かび上がりました。

一つ目は、粗利率の低下。売上高は伸びていましたが、材料費と外注費が上昇していました。売上だけを見れば成長企業、売上総利益率で見ると、少しずつ悪化していたのです。

二つ目は、売掛金の増加。大型工事が増えたことで、完成から入金までの期間が長くなっていました。増えた売上の一部は、現金ではなく「まだ入っていないお金」に姿を変えていました。

三つ目は、案件ごとの採算が把握されていなかったこと。受注金額は即答できても、「あの工事で最終的にいくら残ったのか」を社長が答えられない状態でした。

4

いちご会計は何をしたか

まず、社長が毎月確認する数字を設計し直しました。売上高だけでなく、

  • 売上総利益/粗利率
  • 固定費/営業利益
  • 売掛金残高
  • 預金残高と今後の入出金予定

これらを毎月そろえて見る仕組みをつくりました。

そして最も効いたのが、工事ごとの粗利益を見ることです。「この工事はいくら売れたか」ではなく、

「この工事から、いくら利益が残ったか」

へ、質問そのものを入れ替えました。

5

社長は何を変えたか

最も大きく変わったのは、社長自身でした。

以前の経営会議は「今月はいくら売れた?」が中心。それが次第に、

  • 「この工事の粗利率はいくらだった?」
  • 「外注費が予定より増えた理由は?」
  • 「この売上は、いつ入金される?」

という質問に変わっていきました。

さらに、受注前に採算を確認するようになりました。以前なら「売上になるから」と受けていた仕事でも、必要な粗利益が確保できないなら、価格交渉の場に持ち込む。

試算表が、過去の成績表から、未来の意思決定のための資料に変わった瞬間でした。

6

結果として何が変わったか

低採算工事が減りました。売掛金と入金予定を並べて見ることで、数か月先の資金状況も予測できるようになりました。

しかし何より大きかったのは、「なぜお金がないのか分からない」という状態から、「この月は売掛金が増えるので、一時的に資金が減る」と、社長自身が原因を説明できるようになったことです。

原因が分かれば、手を打てます。資金繰りに対する漠然とした不安が、対処可能な経営課題に変わりました。

社長の声

正直に言うとね、最初は「また試算表の説明か」と思ってたんですよ。うちみたいな工事屋が、月次だ粗利だと言われても、そんなもの現場が回ってなんぼだろうと。

それが、最初の面談で「社長、あの現場、最終的にいくら残りましたか」と聞かれた。答えられなかったんです。売上ならすぐ言えるのに。あれは、悔しかったですね。二十年やってきて、自分の会社のことを知らんかったのかと。

一番変わったのは、通帳の残高で一喜一憂しなくなったことです。前は日曜の夜にネットバンキングを開いて、残高を見てため息をついて、また月曜から現場に出る。その繰り返しでした。今は三か月先までお金の出入りが見えているので、残高が減る月でも「これは売掛金が増えているだけだ」と分かる。分かって減るのと、分からないまま減るのは、まったくの別物ですよ。夜、眠れるようになりました。

あとは、断れるようになりました。前は「売上になるから」で全部受けていた。今は、粗利が出ない仕事は、まず価格の話をさせてくださいと言えます。それで失注したこともありますよ。でも、そこで空いた人と時間を、ちゃんと利益の出る現場に回せている。結果として、去年より受注は減ったのに、残ったお金は増えました。

同業の社長に聞かれたら、こう言いますね。「月次を"見る"んじゃなくて、月次で"決める"ようになるよ」と。それだけです。

この事例が示していること

経営改善というと、売上を増やすこと、経費を削ることを思い浮かべるかもしれません。しかしその前に必要なのは、社長が自社の数字を正しく見ることです。

売上、粗利、固定費、利益、資金。このつながりが見えた瞬間から、経営判断は変わり始めます。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

============ CASE 02 ============

CASE 02|卸売業 B社(従業員約12名・年商約4億円)

銀行残高を毎朝見るのをやめた社長――6か月先まで資金が見えるようになった

1

どんな会社か

法人向け商品の卸売を行うB社。長年の取引先も多く、売上は比較的安定しています。赤字会社でもありません。

それでも社長は、常に資金繰りへの不安を抱えていました。毎朝、会社に来て最初に確認するのはインターネットバンキング。

「今日はこれだけある」「今月末の支払いは大丈夫だろうか」「来月、大きな支払いがあったはずだ」

預金残高によって、その日の気分まで変わる。そんな状態が何年も続いていました。

2

相談前に何に困っていたか

B社には、不可解な現象がありました。

売上が増えた月ほど、資金繰りが厳しくなる。

社長には、その理由が分かりませんでした。「これだけ売れているのに、どうしてお金が足りないんだろう」という感覚だけが残ります。

資金が不足しそうになれば金融機関へ相談し、借入で対応する。しかしその相談は、いつも必要になる直前でした。結果として、資金調達そのものが常に場当たり的になっていたのです。

3

どんな数字に問題があったか

問題は売上ではなく、売上代金を回収するまでの日数と、仕入代金を支払うまでの日数の差にありました。

商品を仕入れる。仕入代金を支払う。商品を販売する。その後に売掛金を回収する。この間の資金は、会社が自分で負担しなければなりません。

売上が増えれば売掛金も増える。在庫も必要になる。つまりB社は、成長するほど運転資金が必要になる構造だったのです。

ところが社長が見ていたのは「今日の預金残高」だけでした。今日お金があるかどうかと、3か月後に足りるかどうかは、まったく別の話です。

4

いちご会計は何をしたか

月次決算と合わせて、6か月程度先までの資金繰り表を作成しました。反映したのは次の項目です。

  • 売掛金の回収予定
  • 仕入代金の支払予定
  • 給与・社会保険
  • 税金・借入金返済
  • 設備投資その他の大口支出

そして毎月、予算と実績を比較しながら予測を更新しました。

大切なのは、精密な未来予測をすることではありません。数か月先に資金不足が起こる可能性を、早い段階でつかむことです。

「3か月後、このままだと預金がここまで減る」と分かれば、その時点から対策を検討できます。

5

社長は何を変えたか

まず、習慣が変わりました。「今日、いくらあるか」から、「3か月後・6か月後にいくら残る見込みか」へ。

設備投資の判断基準も変わりました。以前なら「今、銀行に3,000万円あるから1,000万円の設備は買える」。今は「1,000万円を払った後、運転資金はいくら必要か」「半年先まで資金を確保できるか」を確認します。

金融機関との付き合い方も変わりました。資金が足りなくなる直前に駆け込むのではなく、事業計画と資金計画を持って、早めに相談に行くようになったのです。

6

結果として何が変わったか

社長の資金繰りに対する不安は大きく減りました。資金不足が完全になくなったからではありません。

資金が不足しそうな時期を、事前に把握できるようになったからです。

予測できれば、選択肢が生まれます。回収条件を見直す。仕入条件を交渉する。投資時期をずらす。金融機関へ早めに相談する。

資金繰りが「起きた問題への対応」から、経営者がコントロールする対象へ変わりました。設備投資や採用の判断も、以前より早く、落ち着いて行えるようになっています。

社長の声

情けない話なんですけどね、朝、会社に着いて最初にやるのがネットバンキングを開くことでした。パソコンが立ち上がるのを待つ間、なんとなく胃のあたりが重い。残高を見て、まあ大丈夫だと思えばその日は機嫌がいい。少ないと、朝から社員に当たってしまう。社員には迷惑な話ですよね。

不思議だったのが、売れた月ほど後で苦しくなることです。売上が上がって喜んでいるのに、二か月後に資金が細る。理由が分からないから、手の打ちようもない。足りなくなったら銀行に走る。それを何年も繰り返していました。

初めて資金繰り表を見せてもらったとき、正直、拍子抜けしたんです。特別なことは何も書いてない。売掛金がいつ入って、仕入がいつ出て、給料と税金と返済がいつある。それを半年分並べただけの表ですよ。でもね、その当たり前が見えていなかったんです、二十年間。

一番効いたのは、銀行との話です。前は「今月ちょっと足りなくて」と頭を下げに行っていました。今は半年先の資金計画を持って、こちらから相談に行きます。同じ融資でも、説明できる会社かどうかで担当者の顔つきが違いますよ。金利の話までできるようになりました。

今はもう、朝に残高を見ません。見なくても、この先どうなるか分かっていますから。この前、家内に「最近、朝の機嫌がいいね」と言われましてね。それが一番の成果かもしれません。

この事例が示していること

黒字だから資金繰りに困らない、とは限りません。むしろ成長企業ほど、売掛金や在庫の増加によって資金需要は膨らみます。

経営強化型税務顧問では、過去の損益だけでなく、これから会社のお金がどう動くのかまで社長と共有します。「今月いくら儲かったか」に加えて、「この経営を続けると、半年後に会社はどうなっているか」。そこまで見て初めて、月次決算は経営判断の道具になります。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

============ CASE 03 ============

CASE 03|小売・卸売業 C社(従業員約15名・年商約3億円)

「在庫は財産」という考えを捨てた――倉庫に眠る商品を現金に変えた

1

どんな会社か

小売と卸売を手掛けるC社。毎期一定の利益を確保しており、業績が悪い会社ではありませんでした。

ところが社長には、長年の疑問がありました。

「利益は出ているのに、なぜ借入金がなかなか減らないんだろう?」

決算書は黒字。税金も納めている。それなのに借入は思ったほど減らず、手元資金にも余裕がない。

2

相談前に何に困っていたか

C社では、欠品を非常に恐れていました。「注文が入ったときに商品がなければ、他社に取られてしまう」。その考えから、多めに仕入れることが習慣になっていたのです。

社長にとって在庫は「いつでも売れる会社の財産」でした。ですから倉庫に商品が増えても、問題だとは感じていませんでした。

しかし実際には、何年も動いていない商品が相当数存在していました。

3

どんな数字に問題があったか

数年分の貸借対照表を並べると、一つの数字が目立ちました。

棚卸資産が、毎年増え続けていた。

損益計算書だけを見れば利益は出ています。しかし、生み出した利益の一部が、そのまま在庫に姿を変えていたのです。

さらに、商品別在庫金額・在庫回転期間・長期滞留在庫・在庫増減額を確認すると、一定期間ほとんど動いていない商品が数多くあることも分かりました。

会社のお金は消えたのではありません。倉庫の中で、段ボールの形をして眠っていたのです。

4

いちご会計は何をしたか

損益計算書だけでなく、貸借対照表を毎月の経営管理に取り入れました。特に確認したのは次の数字です。

  • 棚卸資産残高/在庫回転期間
  • 商品別在庫/滞留在庫
  • 借入金/営業キャッシュフロー

そして「在庫がいくらあるか」ではなく、視点を変えました。

「この在庫は、いつ現金になるのか」

売れ筋商品と滞留商品を分けたことで、在庫の実態が初めて見えるようになりました。

5

社長は何を変えたか

当初、社長は在庫処分に強い抵抗がありました。「100万円で仕入れたものを70万円で売ったら、30万円損をする」という感覚です。

しかし、売れない商品を持ち続ければ倉庫スペースを使い、保管管理の手間もかかります。何より、その100万円を新しい売れ筋商品の仕入れに回すことができません。

そこで社長は、「仕入れた価格」ではなく「これからその在庫が生み出す価値」で判断するようになりました。

仕入れについても、「念のため多めに買っておこう」から「適正在庫はいくらか」を考えて発注する形に変わりました。

6

結果として何が変わったか

滞留在庫の処分が進み、倉庫スペースにも余裕ができました。発注方法を見直したことで、過剰在庫も徐々に減っていきました。

最も大きかったのは、利益が以前よりキャッシュとして会社に残りやすくなったことです。

「利益が出たか」だけでなく、「利益はどこへ行ったのか」。社長が貸借対照表を見るようになったことが、その変化を生みました。

社長の声

うちは、在庫は財産だと思っていました。倉庫にぎっしり商品が並んでいるのを見ると、安心したんです。父の代からそう教わってきましたし、実際、欠品でお客さんを他社に取られた苦い経験もありますから。

ずっと引っかかっていたのは、黒字なのに借入が減らないことでした。利益は出ている、税金も払っている、なのに手元にお金がない。どこかで漏れているんじゃないかと、恥ずかしい話ですが、経理を疑った時期さえありました。

先生に「利益は消えていません、倉庫にあります」と言われて、頭を殴られたような気がしましたね。棚卸資産の推移を三期分並べた表を見せられて、増えた分がほぼそのまま利益と重なっていた。うちのお金は、段ボールの形で積んであったんです。

処分は、正直つらかったですよ。100万で仕入れたものを70万で売る。30万損する気がして、判子が押せない。でも「その100万を、今から動く商品に回したらいくら稼ぎますか」と聞かれて、答えが出ました。持ち続ける方が、損が増えていくんだと。

今は在庫を見るとき、「これは財産か」ではなく「これはいつ現金に戻るか」と考えます。倉庫が少しすいて、社員も探し物をしなくなりました。数字の話が、現場の動き方まで変えるとは思っていませんでしたね。

この事例が示していること

利益とキャッシュは同じものではありません。売掛金や在庫が増えれば、利益が出ていても現金は増えません。

経営強化型税務顧問では、損益計算書だけで経営を判断しません。貸借対照表や資金の流れまで確認し、会社で生み出した利益がどこに使われ、どこに滞留しているかを、社長と一緒に見ていきます。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

============================================================ いちご会計事務所様 固定ページ用パーツ 「お金が残らない会社が知っておきたいこと」事例集 - PART 2 ★ このブロックは完全に自己完結型です(style / script を内包)。 ★ PART 1と重複しないよう、ルートID・各CASEのIDは 「ichigo15tax-part2-」で統一しています。 ============================================================
PART 2

忙しいのに儲からない会社

CASE 04 - 06
============ CASE 04 ============

CASE 04|システム開発業 D社(従業員約15名・年商約1億5,000万円)

「こんなに忙しいのに、なぜ儲からないんだろう」

1

どんな会社か

システム開発と業務システムの保守を手掛けるD社。営業は順調でした。顧客からの紹介も多く、エンジニアの予定は数か月先まで埋まっている。

それなのに、利益が思うように残らない。社長の口癖は、いつもこうでした。

「こんなに忙しいのに、なぜ儲からないんだろう」
2

相談前に何に困っていたか

D社では、売上を会社全体でしか管理していませんでした。案件ごとに「何時間かかったのか」「外注費はいくら出たのか」「最終的にいくら残ったのか」を追う仕組みがなかったのです。

ですから、100万円の仕事と500万円の仕事なら、当然500万円の方が良い仕事だと思っていました。

ところが実際には、売上が大きくても追加作業が頻発し、利益がほとんど残らない案件が存在していました。

3

どんな数字に問題があったか

問題は売上ではなく、案件別の採算性でした。

そこで「売上高 - 外注費 - その案件に投入した人件費」という考え方で、案件別の収益性を確認しました。

すると、社内で「大型の優良案件」と呼ばれていた仕事の中に、極端に収益性の低いものがあることが判明します。

原因は、追加仕様への対応でした。「これくらいならサービスで」という小さな譲歩が積み重なり、社員の工数を大量に飲み込んでいたのです。

4

いちご会計は何をしたか

月次の損益に加えて、主要案件について次の数字を並べて確認する形に変えました。

  • 受注金額/外注費
  • 予定工数/実際の工数

案件別粗利益

そして月次ミーティングの議題を入れ替えました。

「どの案件が忙しかったか」ではなく、「どの案件が会社に利益を残したか」
5

社長は何を変えたか

ここから、社長の営業方針が変わりました。

以前は「仕事を取ること」が営業の目的でした。案件別の採算が見えてからは、「適正な利益が残る仕事を取ること」へ。

追加仕様についても、営業担当者が安易に無償対応を約束するのではなく、必ず追加見積りを提示するルールを設けました。営業会議でも、売上予定だけでなく粗利予定を確認するようになりました。

6

結果として何が変わったか

赤字案件・低採算案件が徐々に減りました。社員の残業も「仕事が多いから仕方がない」で済ませず、どの案件に時間がかかっているのかを分析するようになりました。

そして社内から、ある常識が消えました。「売上が大きい仕事=良い仕事」という常識です。

良い仕事とは、顧客に価値を提供しながら、自社にも適正な利益が残る仕事である。その考え方が、社長だけでなく社員にも定着していきました。

社長の声

うちは営業には自信があったんです。紹介で仕事は途切れないし、ホワイトボードのスケジュールは真っ黒。それで安心していました。手帳が埋まっていると、経営がうまくいっている気になるでしょう。あれ、錯覚なんですよね。

案件ごとの粗利を出してもらって、一番売上の大きかった案件が、社内で一番赤かった。あれはこたえましたよ。うちのエースを半年張り付けていた、看板みたいな案件でしたから。数字を見せられたとき、しばらく黙ってしまいました。

原因は追加作業でした。「これくらいならサービスで」って、実は僕自身が現場に言っていたんです。お客さんに喜んでほしくて。でも、その優しさの請求書は、うちの社員の残業で払っていたわけですよ。それに気づいてからは、追加は必ず見積りを出す、と決めました。

嫌われるかなと思いましたが、意外にもお客様から「最初から出してくれた方が、社内で予算を通しやすい」と言われました。曖昧にしていたのは、こちらの都合だったんですね。

今は受注のとき、「いくら売れるか」の前に「いくら残るか」を見ます。数字が分かると、断る勇気じゃなくて、断る根拠が持てる。勇気は続かないですけど、根拠は続きますから。

社員にも言えるようになりました。「この案件は、ここまでで止めよう」と。前は根拠がないから、頑張れとしか言えなかった。今は、社員を守るために数字を使っています。

この事例が示していること

経営者が見るべき数字は、業種によって違います。システム開発や専門サービス業にとって、社員の「時間」は最大の経営資源です。

だからこそ、売上だけでなく、どの仕事に時間を投入し、その結果いくらの付加価値を生んだのかを見る必要があります。数字が見えると、仕事の選び方が変わる。仕事の選び方が変わると、会社の収益構造そのものが変わります。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

============ CASE 05 ============

CASE 05|法人向け専門サービス業 E社(従業員約18名・年商約2億円)

年商2億円なのに社長の給与が増えない――「経費削減」から「生産性向上」へ

1

どんな会社か

法人向けの専門サービスを提供するE社。創業以来、社長自身の営業力と高い専門性を武器に顧客を増やし、売上は順調に伸びてきました。社員も増え、事務所も広くなり、外から見れば順調な成長企業です。

ところが社長には、どうしても納得できないことがありました。

「会社は毎年大きくなっているのに、なぜ自分の給与はなかなか増やせないのだろう?」

売上1億円だった頃と比べれば、会社の規模はほぼ倍。にもかかわらず利益は思ったほど増えず、社長自身の仕事量はむしろ増えている。「売上は増えた。社員も増えた。それなのに会社が楽にならない」――それが社長の悩みでした。

2

相談前に何に困っていたか

社長がまず考えたのは「経費削減」でした。コピー代を減らす。備品を安く買う。交際費を抑える。

無駄な経費を減らすことは確かに大切です。しかし数万円、数十万円の削減では、会社全体の利益構造は変わりませんでした。

一方で、社員が増えるたびに給与、社会保険料、採用費、教育費、事務所費といった固定費は確実に増えていきます。

問題は経費の「金額」ではなく、会社が生み出す付加価値に対して固定費が適正なのかという点にありました。

3

どんな数字に問題があったか

数年間の数字を並べると、売上高は確実に増加していました。ところが人件費率・販管費率・売上高固定費率・労働分配率は、いずれも徐々に上昇していたのです。

さらに決定的だったのが、一人当たりの粗利益でした。

社員数は増えたのに、一人が生み出す粗利益は下がっていた。

会社は売上では成長していましたが、生産性の面では弱くなっていた。社長はこのとき初めて、「売上が増えたから成長している、とは限らないんですね」と口にしました。

4

いちご会計は何をしたか

月次試算表の数字を説明するのではなく、E社の経営構造を把握するための指標を整理しました。毎月確認するのは次の8つです。

  • 売上高/粗利益/粗利率
  • 人件費/その他固定費
  • 労働分配率/一人当たり粗利益

営業利益

重要だったのは、前年差だけを見るのではなく、比率と生産性を時系列で比較したことです。

「人件費が去年より500万円増えています」だけでは、経営判断には足りません。それよりも、

「人件費は増えたが、それに見合う粗利益は増えているか」

と問う必要があります。月次ミーティングの議題も、「どの経費を削るか」から「どうすれば同じ人数でもっと付加価値を生み出せるか」へ変わりました。

5

社長は何を変えたか

以前は「忙しくなったから人を採ろう」。それが「この仕事は、本当に人を増やさなければ対応できないのか?」に変わりました。

業務フローを見直す。担当者ごとにバラバラだった仕事を標準化する。定型業務をIT化する。顧客ごとの業務量と料金を比較する。管理職に任せられる仕事を増やす。こうした改善を一つずつ進めました。

新規採用についても、「一人採用すると年間いくら固定費が増えるのか」「その固定費を回収するには、いくら粗利益を増やす必要があるのか」を確認してから判断するようになりました。

「人を増やして売上を増やす」から、「生産性を高めて利益を増やす」へ。

6

結果として何が変わったか

安易な採用が減りました。忙しい部門にすぐ人を足すのではなく、業務改善・配置転換・IT活用を先に検討するようになったのです。

また、業務量の割に料金が低かった顧客については、契約内容や価格を見直しました。その結果、売上を無理に追いかけなくても、粗利益と営業利益を確保しやすい体質に変わっていきました。

社長自身も、「もっと売上を作らなければ」という焦りから、「今の経営資源から、どうすればより大きな付加価値を生み出せるか」を考えるようになりました。会社の成長を売上ではなく、生産性と利益で測れるようになったことが、最大の成果でした。

社長の声

会社は大きくなっているのに、自分の給料は上げられない。これ、他の社長さんには言いにくい話なんですよ。かっこ悪いでしょう。売上は倍になったのに、手取りは創業間もない頃と大して変わらない。何のためにやっているのかな、と思う夜もありました。

だから、経費を削ろうとしたんです。コピー用紙を安いのにして、交際費を我慢して。今思えば、あんな小さな話で会社が変わるわけがない。でも、他に打つ手を知らなかった。頑張っている感じだけはありましたけどね。

転機は、一人当たりの粗利を出してもらったときです。社員は18人に増えているのに、一人が生み出す粗利は、10人の頃より減っていた。会社は大きくなったんじゃなくて、薄くなっていたんです。あの表は、今でも机の引き出しに入れてあります。

そこからは、経費じゃなくて仕組みを見るようになりました。同じ仕事なのに担当者ごとにやり方が違って、その調整で時間を食っている。同じ数字をExcelに二回入力している。そういうものを一つずつ潰していきました。地味ですよ。でも、経費削減より何倍も効きました。

採用も変わりました。前は「忙しいから一人採ろう」。今は「一人採ると年間いくら固定費が増えて、それを回収するにはいくら粗利が要るか」を先に見ます。それで見送った年もあれば、迷わず二人採った年もある。とにかく、判断が早くなりました。

ええ、自分の給料も、やっと上げられました。会社が大きくなったからじゃありません。中身が変わったからです。そこは、はっきり違いますね。

この事例が示していること

会社の規模が大きくなるほど、社長が見るべき数字は変わります。重要なのは「いくら売れたか」だけではなく、「その売上を、どれだけ効率よく利益に変えられたか」です。

経営強化型税務顧問では、月次試算表を税金計算のためだけには使いません。数字から会社の収益構造を読み取り、経営者と一緒に「次に何を変えるべきか」を考えていきます。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

============ CASE 06 ============

CASE 06|法人向け専門サービス業 F社(従業員約25名・年商約2億5,000万円)

「社員を増やせば売上が増える」からの脱却――一人当たり粗利を追い始めた

1

どんな会社か

法人向け専門サービスを提供するF社。受注は増えており、社長は会社をさらに拡大したいと考えていました。

仕事が増える。社員が忙しくなる。新しい社員を採用する。売上が増える。また忙しくなる。そして、さらに採用する。

このサイクルを何年も繰り返してきました。ところが会社の規模が大きくなるにつれて、利益率は逆に低下していったのです。

2

相談前に何に困っていたか

社長には確信がありました。「この業界は人が商品だから、売上を増やすには人を増やすしかない」。ですから、社員が忙しくなったら採用することが経営改善だと思っていたのです。

しかし採用すれば、給与だけでなく社会保険・採用費・教育費・PCやシステム・オフィススペース・管理コストも増えていきます。

売上は増えました。それ以上に、固定費も増えていました。

3

どんな数字に問題があったか

過去数年を比較すると、会社全体の売上高は増加していました。しかし、

一人当たり売上高と、一人当たり粗利益は低下していた。

さらに業務別に時間を分析すると、社員が多くの時間を、社内事務・重複入力・手作業による資料作成・採算の低い顧客対応に使っていることが分かりました。

問題は人数不足ではありません。限られた人材の時間を、十分に付加価値へ変えられていなかったことが本質的な課題でした。

4

いちご会計は何をしたか

毎月、次の指標をKPIとして確認する形にしました。

  • 一人当たり売上高/一人当たり粗利益
  • 人件費率/労働分配率

時間当たり付加価値

さらに「この業務には何時間かかっているか」「その業務から、どれだけ粗利益が生まれているか」という視点を加えました。

月次ミーティングでの問いも変えました。

「あと何人採用するか」ではなく、「今の25人でどこまで付加価値を高められるか」
5

社長は何を変えたか

採用の前に、まず業務改善を考えるようになりました。

紙やExcelで重複していた業務を整理する。定型作業をIT化する。担当者しか分からない業務を標準化する。料金と作業量が合っていない顧客の契約を見直す。管理職に仕事を移管する。

採用についても、「忙しいから一人増やす」ではなく、「一人増やすことで会社全体の粗利益がどれだけ増えるのか」を考えて判断するようになりました。

6

結果として何が変わったか

業務標準化とIT化が進み、社員一人当たりが担当できる業務量が増えました。低採算業務や料金体系も見直しました。

その結果、会社の議論は「人が足りない」から、「どうすれば社員一人ひとりが、より大きな価値を生み出せるか」へ変わりました。

採用をやめたわけではありません。必要なところには積極的に採用します。ただし、その採用が会社の生産性と利益にどう影響するかを、数字で考えるようになりました。

社長の声

うちの業界は人が商品ですから、売上を増やすには人を増やすしかない。ずっとそう信じていました。忙しくなったら採る、また忙しくなったら採る。25人まで来ましたけど、気がついたら、社員が増えるたびに利益率が落ちていたんです。数字を見るまで、逆だと思い込んでいました。

社員の時間の使い方を調べてもらって、これはこたえましたね。うちで一番できる社員が、一日のかなりの時間を、社内向けの資料づくりと同じ数字の二重入力に使っていた。お客様のために採用した人材を、社内事務に使っていたわけです。人が足りないんじゃない。人の使い方が下手だったんですよ。

「あと何人採りますか」という会議を、「今の25人でどこまでやれますか」に変えました。最初は社員が身構えましたよ。人を増やさない、イコール、もっと働け、という意味に取られますから。だから、時間を減らすための投資は惜しまないと約束しました。システムも入れました。

一年やって、残業は減って、一人当たりの粗利は上がりました。採用をやめたわけじゃありませんよ。今も採っています。ただ、「忙しいから」ではなく、「ここに人を置けば、会社の粗利がこれだけ増える」と説明できる採用だけをしています。

面白いもので、その説明ができるようになってから、採用面接でも会社の話がうまくできるようになりました。数字が言葉になるんですね。うちがどこへ向かっているかを、若い子に自分の口で言えるようになった。これは思わぬ副産物でした。

この事例が示していること

社員数を増やし続ける経営には限界があります。特に人材採用が難しくなるほど重要なのは、一人当たりの生産性を高めることです。

経営強化型税務顧問では、人件費を単なる「コスト」とは考えません。人材という経営資源から、どれだけ付加価値を生み出せているかを数字で確認し、採用・価格・業務改善の判断につなげます。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

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PART 3

価格と目標の決め方が変わった会社

CASE 07 - 08
============ CASE 07 ============

CASE 07|部品加工業 G社(従業員約30名・年商約5億円)

「値上げをお願いしたら、取引先を失うのではないか」

1

どんな会社か

部品加工を手掛けるG社。長年の取引先が多く、売上は比較的安定していました。

ところが材料費、電気代、人件費が次々に上昇し、利益は静かに圧迫されていきます。それでも社長は、価格を上げられませんでした。

「値上げをお願いしたら、取引先を失うのではないか」

その恐怖が、判断を止めていました。

2

相談前に何に困っていたか

G社では、取引先から提示された価格を前提に仕事を受けることが多く、「自社が必要とする利益から販売価格を考える」という習慣がありませんでした。

原材料価格が上がっても、「長い付き合いだから」「競合に取られたくないから」と、自社で吸収し続けていたのです。

3

どんな数字に問題があったか

会社全体の売上高は、ほとんど変わっていません。ところが粗利率を時系列で並べると、はっきりと右肩下がりでした。

さらに製品別に原価を整理すると、現在の価格では十分な利益が出ていない製品が複数見つかりました。

問題は「値上げできるかどうか」以前に、「いくらで売らなければならないのかを、そもそも把握していなかったこと」だったのです。

4

いちご会計は何をしたか

まず製品群ごとに、材料費・外注費・加工時間などを整理しました。その上で、

  • 現在の販売価格では、どの程度の利益が残るのか
  • 必要な利益を確保するには、いくらの価格が必要なのか

を数字で確認しました。

重要だったのは、「値上げしましょう」と提案することではありません。価格交渉のための根拠を、数字でつくることでした。

5

社長は何を変えたか

社長は、主要取引先との価格交渉を始めました。

以前なら「原材料が上がったので、値上げをお願いします」というお願いになっていたはずです。しかし今回は違いました。

  • 「材料費がこれだけ上昇している」
  • 「この加工工程には、これだけのコストがかかっている」

と、事実を示して説明できるようになったのです。

そして何より、「価格は相手が決めるもの」から、「継続して価値を提供するために必要な価格を、自社が考える」へと、発想そのものが変わりました。

6

結果として何が変わったか

すべての取引先が値上げを受け入れたわけではありません。それでも、多くの顧客とは交渉のテーブルにつくことができました。

どうしても採算が合わない製品については、取引条件や生産方法そのものを見直しました。結果として、粗利率は改善方向へ向かいました。

それ以上に大きかったのは、社長が価格決定を「営業上の問題」ではなく、経営上の意思決定として扱うようになったことです。

社長の声

値上げ、という言葉を口に出すのが怖かったんです。三十年お付き合いいただいている先ですから。こちらから言った瞬間に、関係が壊れる気がして。断られる怖さより、言い出す怖さの方が大きかった。

でも、製品ごとの原価を一つずつ出してもらって、正直、青ざめました。この価格のまま続けたら、うちは何年ももたない。値上げをお願いするのが怖いんじゃなくて、値上げしないまま続ける方がよっぽど怖いことだった。それが数字で分かったんです。

交渉には、先生に作ってもらった資料を持っていきました。「材料がこれだけ上がって、この工程にこれだけかかっています」と。そうしたら先方の担当者が、「よく分かりました、社内で通します」と。全部の取引先がOKしてくれたわけじゃありませんよ。でも、頭を下げてお願いしに行ったんじゃなくて、話をしに行けた。あれは大きかったです。

帰りの車の中でね、これは値上げの話じゃなかったな、と思いました。うちの仕事にいくらの価値があるのかを、初めて自分の言葉で説明できた日だったんです。

今はどんな小さな見積りでも、出す前に利益が残るか確認します。うちは、価格を「もらう」会社から、価格を「決める」会社になったんだと思います。

この事例が示していること

決算が終わってから「今年はいくら利益が出たか」を確認するだけでは、経営管理としては不十分です。必要なのは、仕事を受ける前に利益を考えることです。

原価を知る。必要利益を決める。そのうえで価格を考える。

利益は「結果」ではなく、「設計するもの」です。経営者がこの順番で数字を見るようになったとき、会社の利益構造は動き始めます。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

============ CASE 08 ============

CASE 08|美容関連サービス業 H社(従業員約10名・年商約8,000万円)

「売上1億円」を目標にするのをやめたら、利益が増えた

1

どんな会社か

美容関連サービスを展開するH社。創業後、口コミやSNSを活用しながら順調に顧客を増やしてきました。

社長には明確な目標がありました。

「まずは年商1億円企業にしたい」

そこで広告を増やし、新規顧客向けキャンペーンを実施し、集客を強化しました。売上は確かに伸びました。しかし、社長が期待していたほど利益は残りませんでした。

2

相談前に何に困っていたか

売上目標を達成するため、現場には「もっと売ろう」というメッセージが出ていました。その結果、

  • 新規客向けの大幅割引
  • 広告費の増加
  • 低単価メニューの販売
  • 営業時間の延長

が続きました。スタッフは忙しくなっています。予約表も埋まっています。それでも月末になると、利益がほとんど残らない月がありました。

社長は「あと2,000万円売上を増やせば、きっと利益も増える」と考えていました。

3

どんな数字に問題があったか

サービス別・店舗別に数字を整理すると、利益率に大きな差があることが分かりました。

売上が大きくても、値引率が高い。施術時間が長い。材料原価が高い。スタッフの稼働時間を多く使う。こうしたメニューは、思ったほど利益を生んでいませんでした。

一方、売上金額自体はそれほど大きくなくても、粗利益率が高く、リピートにつながりやすいサービスもありました。

問題は、売上高だけを目標にして、どの売上が利益につながっているのかを見ていなかったことでした。

4

いちご会計は何をしたか

まず店舗別・サービス別に損益を整理し、次の数字を確認するようにしました。

  • 売上高/粗利益/粗利率
  • 客単価/人件費/広告費
  • 店舗別損益/損益分岐点

さらに、年間の利益目標から逆算して「会社として必要な粗利益はいくらか」を明確にしました。

売上目標から考えるのではなく、

必要な利益 → 必要な粗利 → 売るべきサービスと数量

という順番に、考える向きを変えたのです。

5

社長は何を変えたか

社長は「年商1億円」という目標へのこだわりを、いったん外しました。

そして低採算メニューの料金を見直し、過度な値引きキャンペーンも減らしました。

広告についても、「何人集客できたか」ではなく「広告費に対して、どれだけ利益につながる顧客を獲得できたか」を見るようになりました。

スタッフとの会議でも、「もっと売上を作ろう」だけではなく、「どのメニューを提案すれば、お客様にも会社にも価値があるのか」を話すようになりました。

6

結果として何が変わったか

低採算メニューが整理され、客単価が改善しました。必要以上の値引きも減りました。

売上高だけを見れば急激な伸びではありません。しかし粗利益と営業利益は改善方向へ向かいました。

さらに大きかったのは、社長が「売上を作ること」と「利益を作ること」は違うと理解したことです。経営会議でも、「今月の売上はいくらだったか」だけではなく「必要な粗利を確保できたか」を見るようになりました。

社長の声

創業してからずっと、年商1億円が目標でした。何の根拠もないんですよ。ただ、1億の会社になれば一人前だと思っていた。それだけです。今思えば、誰のための目標だったんだろうと。

その数字を追いかけて、割引をして、広告を打って、メニューを増やして、営業時間も延ばしました。予約表は埋まりました。スタッフはヘトヘトです。それで月末に数字を見ると、ほとんど残っていない。あれは、スタッフに申し訳なかったですね。

サービスごとの粗利を出してもらったら、うちの看板にしていた人気メニューが、実は一番利益が薄かった。時間もかかるし、材料も使うし、しかも割引していた。一番売れているものが、一番会社を痩せさせていたんです。

思い切って、1億という目標をいったん捨てました。代わりに「今年、いくら利益が必要か」から逆算しました。必要な粗利、そのための単価、そのためのメニュー構成。順番を逆にしただけで、やることが全部変わりましたね。

売上の伸びは、正直、前より地味です。でも利益は増えました。何より、スタッフに無理な数字を求めなくてよくなった。今はミーティングで「今月いくら売った」ではなく「今月どれだけ残った」を話します。スタッフの方から「このメニューは値上げした方がいいのでは」と言ってくれるようになりました。

数字って、社長が社員を追い立てる道具だと思っていたんです。でも逆でした。社員を守る道具でしたね。

この事例が示していること

売上は分かりやすい数字です。だからこそ、多くの会社が売上高を目標にします。

しかし会社を継続し、社員の給与を上げ、設備投資をし、将来に備えるために必要なのは、利益とキャッシュです。

経営強化型税務顧問では、売上目標を追うだけではなく、「必要利益から逆算して、どのような経営をすべきか」を社長と一緒に考えていきます。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

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PART 4

数字が「使われる」会社になった

CASE 09 - 10
============ CASE 09 ============

CASE 09|飲食業(複数店舗) I社(年商約1億8,000万円)

月次決算が「過去の報告書」ではなくなった――予算と実績を毎月比較する

1

どんな会社か

複数店舗を運営する飲食業I社。各店舗には店長がおり、社長は全社の運営と新規出店、仕入先との交渉などを担当していました。

会計処理は毎月行っており、試算表も作成されています。一見すると、月次決算ができている会社です。

しかし実際には、その試算表はほとんど経営に使われていませんでした。

2

相談前に何に困っていたか

社長が本格的に数字を見るのは、決算時期でした。そこで初めて「今年は思ったほど利益が残っていないですね」という話になります。

しかし決算が終わった時点で、その一年はすでに終わっています。「原価率が高かった」「人件費が増えていた」と分かっても、過去には戻れません。

店舗ごとの状況も社長の感覚で判断する部分が多く、「A店は忙しそうだから調子がいい」「B店は売上が少ないから厳しい」という評価になっていました。

3

どんな数字に問題があったか

店舗別に数字を整理すると、社長の感覚と実際の収益性が一致していないことが分かりました。

ある店舗は売上が高いものの、原価率と人件費率も高く、利益はそれほど残っていない。反対に、売上高は比較的小さくても、適切な人員配置によって利益率が高い店舗もありました。

さらに月ごとに、原価率・人件費率・客単価・営業利益率が大きく変動していました。

問題は数字そのもの以上に、基準となる予算がなく、実績の良し悪しを判断できないことでした。

4

いちご会計は何をしたか

まず店舗ごとの年間予算を作成しました。そして毎月、次を比較する仕組みにしました。

  • 売上予算と実績
  • 原価予算と実績/原価率
  • 人件費予算と実績/人件費率
  • 店舗別営業利益

単に「今月の原価率は35%でした」と報告するのではありません。

「予算32%に対して35%。3ポイント悪化した原因は何か」

数字を「報告」で終わらせず、「原因分析」と「翌月の行動」につなげる。そこまでを月次の仕事に含めました。

5

社長は何を変えたか

社長は店長会議の内容を変えました。

以前は「もっと売上を上げよう」「人件費を抑えよう」という抽象的な指示が中心。それが、

  • 「A店はなぜ原価率が2ポイント高かったのか」
  • 「B店は売上未達だが、人件費をコントロールできている」
  • 「来月はどの数字を改善するのか」

という具体的な会話になりました。

そして社長だけでなく、店長自身が自分の店舗の数字を見るようになりました。数字が経理部門のものから、現場責任者のものへ変わったのです。

6

結果として何が変わったか

店舗ごとの問題を早期に発見できるようになりました。原価率が高ければ、仕入価格・廃棄・メニュー構成をすぐ確認する。人件費率が高ければ、シフトや営業時間を見直す。売上が低ければ、客数なのか客単価なのかを分解する。

決算を待たず、翌月から行動を変えられるようになりました。さらに、店長自身が損益を意識することで、店舗経営への責任感も高まりました。

月次決算は「社長に提出する過去の成績表」から、「来月の経営を良くするための道具」へ変わったのです。

社長の声

試算表は、前も毎月もらっていたんですよ。ちゃんと届いていました。ただ、封を開けて、売上と利益をちらっと見て、引き出しに入れる。それで終わり。見ていたつもりでしたけど、使ってはいなかったんですね。

決算のときに「今年は思ったより残っていませんね」と言われて、そうですかと答える。もう終わった一年について反省会をしているわけです。あれ、意味がないですよね。反省したところで、去年は変えられない。

予算を作りましょうと言われたときは、正直めんどうくさかったです。飲食なんて水物なのに、予算なんて当たるわけがないと。でも、やってみて分かりました。予算は当てるためのものじゃない。ズレに気づくためのものなんですね。原価率が予算より3ポイント高いと分かるから、何が起きたのかを調べられる。

一番変わったのは、私じゃなくて店長です。前は売上のことしか言わなかった連中が、今は「今月は廃棄を減らしたので原価率が下がりました」と自分から報告してくる。数字が、経理のものから現場のものになった感じです。

正直に言うと、私の勘は、けっこう外れていました。忙しそうに見えていた店が一番薄利で、地味だと思っていた店が一番稼いでいた。二十年見てきた自分の目より、数字の方が正確だったんです。それを認めるのに、ちょっと時間がかかりましたけどね。

この事例が示していること

月次決算を翌月に作ることは重要です。しかし、それだけでは経営は変わりません。

重要なのは、予算との差を確認し、原因を考え、次の行動を決めること。

経営強化型税務顧問では、試算表を作って終わりにはしません。数字を材料に、社長や幹部が経営について議論できる仕組みを作ることを重視しています。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

============ CASE 10 ============

CASE 10|複合サービス業 J社(従業員約35名・年商約6億円)

「今年はいくら儲かりますか?」と税理士に聞かなくなった社長

1

どんな会社か

複数の事業を展開するJ社。営業力が強く、社長自身も業界や顧客のことには非常に詳しい経営者でした。

一方、会計については「数字は経理と税理士に任せればいい」という考えでした。毎月試算表は作られています。しかし社長が見るのは、売上高と最終利益くらいでした。

2

相談前に何に困っていたか

年末が近づくと、社長が税理士に尋ねるのが恒例の質問がありました。

「先生、今年はいくらくらい利益が出そうですか?」

利益が多そうなら「何か節税できませんか」と相談する。少なければ「思ったより儲かっていないな」と感じる。

しかし、その時点では年度の大半が終わっています。もっと早く利益の着地が分かっていれば、採用をする、賞与を増やす、設備投資をする、営業活動を強化する、価格を見直す――さまざまな選択肢があったはずです。

3

どんな数字に問題があったか

J社に試算表がなかったわけではありません。

問題は、試算表が過去の説明にしか使われていなかったことです。

社長は、売上高、利益、預金残高を、それぞれ別々の数字として見ていました。しかし実際には、売上が変われば粗利益が変わり、粗利益と固定費の差が営業利益になり、利益が出ても売掛金や在庫が増えれば資金は残らない。

これらはすべてつながっています。その関係を、社長自身が把握していませんでした。

4

いちご会計は何をしたか

最初から複雑な経営指標を大量に見ることはしませんでした。まずは5つの数字に絞って、毎月経営状況を確認しました。

  • 売上/粗利益/固定費/営業利益/資金

そして重要だったのが、実績の確認だけで終わらせないことです。

当月までの実績と今後の売上見込みを使って、「このままいけば年度末の営業利益はいくらになるか」を毎月更新しました。

さらに「社員を二人採用した場合」「大きな設備投資をした場合」「粗利率が1ポイント下がった場合」も、数字で確認できるようにしました。

5

社長は何を変えたか

最初は説明を受ける側だった社長が、次第に自分から質問するようになりました。

  • 「この売上が入ったら粗利はいくら増える?」
  • 「この採用で固定費は年間いくら増える?」
  • 「営業利益5,000万円を確保するなら、あとどのくらい粗利が必要?」

そして、さらに変化が起きました。月次ミーティングの前に、社長自身が利益の着地を予測するようになったのです。

「数字を説明してもらう社長」から、「数字で経営を考える社長」へ。

税理士との関係も変わりました。「この数字は何ですか?」ではなく、「この数字なら、次はこうした方がいいと思うがどうでしょう」という相談が増えていきました。

6

結果として何が変わったか

年度末になって初めて利益に気づくことがなくなりました。数か月先の着地利益を見ながら、採用・賞与・設備投資・営業施策・資金調達を早めに判断できるようになりました。

予想より利益が少ない場合も、決算直前に慌てるのではなく、残り数か月で打ち手を考えられます。

一番大きな成果は、特定の利益額ではありません。社長自身が自社の利益構造を理解し、自分で未来の数字を考えられるようになったことでした。

社長の声

毎年12月になると、先生に電話して「今年はいくらくらい出そうですか」と聞くのが恒例でした。それで「思ったより出ています」と言われたら、何か節税できませんかと相談する。それが経営者の仕事だと思っていたんです。

でも、12月に分かっても遅いんですよね。もっと早く分かっていれば、賞与も出せたし、あの設備も買えた。いい人がいたのに採用を見送った年もあります。結果を知るのがいつも最後、というのは、経営者として恥ずかしいことだと、あるとき気づきました。

見る数字は、売上・粗利・固定費・営業利益・資金の5つに絞ってもらいました。多いと、結局見なくなりますから。それを毎月、実績と、このままいったらどうなるかの見込みで並べる。最初は説明を聞くだけでしたが、3か月くらいで自分から質問するようになりました。

今はね、月次の資料が届く前に、自分で着地を予想するんですよ。それで答え合わせをする。外れると悔しいので、次はもっと考える。ゲームみたいなものです。だんだん当たるようになってきました。

先生への相談の仕方も変わりました。前は「この数字はどういう意味ですか」。今は「この数字だから、来期はこうしようと思うんですが、どう思われますか」。同じ顧問料を払っているのに、受け取っているものがまるで違います。

数字が苦手だったんじゃなかったんですよ。経営に必要な数字の見方を、誰にも教わってこなかった。ただそれだけだったんだと思います。

この事例が示していること

経営者に代わって税理士が経営判断をすることはできません。採用するのも、投資するのも、価格を決めるのも、最後は社長です。

だからこそ大切なのは、税理士だけが数字を理解することではなく、社長自身が数字を使えるようになることです。

経営強化型税務顧問が目指しているのは、「決算書を説明してもらえる税務顧問」から、「毎月の数字を使って、未来の経営を一緒に考える税務顧問」への転換です。

申告期限が来たから数字を見るのではありません。経営判断をするために、毎月数字を見る。その習慣が会社に根付いたとき、税務顧問の価値そのものが変わります。

※本記事は、守秘義務の観点から、いちご会計事務所での経営改善事例を参考に再構成したケースです。

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SUMMARY|10社に共通していた、三つの変化

業種も規模も課題も違う10社に共通していた、変化の起点

1

社長が見る数字が変わった

建設業、卸売業、小売業、システム開発業、専門サービス業、部品加工業、美容関連業、飲食業。業種も規模も課題も違う10社ですが、変化の起点はまったく同じでした。

売上高と預金残高から、粗利・工数・在庫・売掛金・一人当たり付加価値・入出金予定へ。

会社によって見るべき数字は違いますが、「売上以外を見た」という点は共通でした。
2

会議での質問が変わった

「いくら売れたか」から「いくら残ったか」へ。そして「なぜそうなったか」「来月どうするか」へ。

質問が変われば、集まる情報も、決まることも変わります。

3

決めるタイミングが変わった

受注した後の反省から、受注する前の判断へ。決算後の報告から、期中の意思決定へ。

同じ数字でも、見る時期が変われば打てる手がまったく変わります。

10社とも、売上を一気に伸ばしたわけでも、大きな資金調達をしたわけでもありません。社長が見る数字を変えただけで、会社に残るお金が変わりました。

数字が変わる前に、社長の見方が変わる。
4

経営強化型税務顧問とは

記帳と申告だけの顧問ではありません。次の4つを、毎月の関与の中で一緒に行います。

  • 御社の業種・商流に合わせて、社長が毎月見るべき数字を設計します(工事別・案件別・製品別・店舗別・一人当たり など)
  • 月次で「今どうなっているか」ではなく、「これからどうするか」を一緒に決めます
  • 資金繰り予定表で、数か月先のお金の動きを見えるようにします
  • 価格・設備投資・採用など、大きな判断の根拠を数字でつくります

そしてもう一つ。私たちが最も大切にしているのは、「税理士が数字を理解している状態」ではなく、「社長が数字を使いこなしている状態」をつくることです。